さて、2018年シーズンの成績で攻撃編も更新しました。
まだ守備編をご覧になっていない方は、守備編でそもそもなぜアライバと比べているのかの背景と今回の攻撃編で総括をしてしまうことから守備編を先に読んでからご覧いただけると話の流れがすっきりするかと思います。
守備編はこちら!
それでは今回はカープが誇るタナキクとアライバを攻撃面のデータから徹底的に比較したいと思います。
「タナキク」と「アライバ」攻撃面での比較年度は?
前回更新した記事では単年での比較では少しムラが出そうでしたので連続した2年で比較することにしていました。
今回はタナキクの成績の変遷も見るということで2015年から2018年までの4年分のデータを載せています。
アライバは前回記事同様に攻撃面で全盛期だった2004年、2005年のデータを用いています(他の年はアライバもこれより成績が下がるので、単純に今年のタナキクの成績がアライバの成績と比べて低くてもなんら不思議ではありません)。
カッコ内数字はドラゴンズは左から荒木選手、井端選手。
カープは左から田中選手、菊池選手です。
試合数 | 打率 | 本塁打 | 打点 | 得点 | 盗塁 | 犠打 | 三振 | 併殺打 | 出塁率 | OPS | |
2004中日 | 276 (138, 138) | 0.594 (.292, .302) | 9 (3, 6) | 101 (44, 57) | 174 (93, 81) | 60 (39, 21) | 25 (7, 18) | 161 (87, 74) | 23 (7, 16) | 0.689 (.322, . 367) | 1.433 (.671, .762) |
2005中日 | 291 (145, 146) | 0.614 (.291, .323) | 8 (2, 6) | 104 (41, 63) | 175 (88, 87) | 64 (42, 22) | 25 (6, 19) | 151 (74, 77) | 24 (13, 11) | 0.737 (.332, .405) | 1.494 (.677, .817) |
2015広島 | 284 (141, 143) | 0.528 (.274, .254) | 16 (8, 8) | 77 (45, 32) | 123 (61, 62) | 25 (6, 19) | 54 (5, 49) | 197 (105, 92) | 15 (8, 7) | 0.617 (.325, .292) | 1.373 (.738, .635) |
2016広島 | 284 (143, 141) | 0.580 (.265, .315) | 26 (13, 13) | 95 (32, 56) | 194 (102, 92) | 41 (28, 13) | 26 (3, 23) | 225 (119, 106) | 4 (1, 3) | 0.725 (.367, .358) | 1.529 (.739, .790) |
2017広島 | 281 (143, 138) | 0.561 (.290, 271) | 22 (8, 14) | 116 (60, 56) | 192 (105, 87) | 43 (35, 8) | 36 (6, 30) | 227 (120, 107) | 14 (5, 9) | .0709 (.398, .311) | 1.521 (.805, .716) |
2018広島 | 282 (143, 139) | 0.495 (.262, 233) | 23 (10, 13) | 120 (60, 60) | 177 (92, 85) | 42 (32, 10) | 36 (6, 30) | 229 (118, 111) | 11 (6, 5) | .0663 (.362, .301) | 1.401 (.745, .656) |
バッターのタイプとしては荒木選手は積極的に打ちに出るタイプ(四球は少ない)でどちらかと言えば菊池選手に近く、井端選手は粘り強く選球眼が良いタイプ(四球も多い)でどちらかと言えば田中選手に近いタイプとは言えそうです。
厳密に言えば、得点や打点などはその前後を打つバッターの成績にも左右されるものですのでこれらの記録が単純に各コンビの攻撃力を表すかには疑問の余地はあります。
それでも出場試合数がたまたまですがほぼ同じということで、比較して傾向くらいは十分に読み取れると判断しましたので上の表を使って比較していきたいと思います。
「アライバ」が「タナキク」より優れているところは?
アライバがタナキクより優れている部分として打率の高さ、三振の少なさ、そして盗塁の多さが挙げられます。
タナキクは今年は昨年に比べて成績を落とした項目が多いですが(特に打率はコンビ結成して4年で最低の成績に終わりました)、過去の記事でアライバが優れているとしたもある出塁率の高さ、打点の多さについてはアライバの全盛期と比べても互角になったものとして書いていきたいと思います。
まずは打率ですが全盛期の荒木選手は2年連続で.290超え、井端選手は2年連続で3割を超えています。
一方、タナキクコンビはまだ二人ともが高い打率を残せた年はなく、打率の安定感という意味ではアライバコンビに分があるでしょう。
今年は田中選手、菊池選手ともに成績を前年より落としました。
特に菊池選手の打撃不振は深刻でしたね…パンチ力は健在でしたが確実性についてはプロ入り後最低の成績に終わりました。
菊池選手は2016年には.315, 2014年は.325と単年では井端選手にも劣らない成績を残しており、この頃のバッティングを来年以降取り戻せるのかが大きく鍵を握ります。
田中選手については多少の波はありますがある程度コンスタントに成績を残していますね。
続いてアライバ最大の武器、嫌らしさにつながっていたのが三振数の少なさです。
タナキクは二人とも100を優に超える三振を喫しているのに対し、アライバはせいぜい80程度。
追い込まれても何とかしてバットに当ててくるので、何かが起こるかもしれない嫌らしい印象があったのだと思います。
送りバントの数も少ないですし、ただでアウトはくれない。
イメージだけでなく、残した記録もそれを裏付けていますね。
ここまで結成4年のタナキクコンビですが、その経緯を見ても改善される傾向は見えてきません。
ここはアライバに一日の長がありそうです。
そして3つ目は盗塁の多さです。
これは荒木選手が大いに寄与していますが、井端選手もシーズン20個以上の盗塁を決めていることも見逃せません。
そして盗塁数だけでなく、盗塁成功率でも差があります。
2016年の田中選手は28もの盗塁を決め、一躍盗塁王争いに絡みましたがその反面19個の盗塁死を記録。
2017年はその経験を生かして飛躍的に成功率を向上、成功35個に対して失敗は13個。
そして今年2018年は32個の成功に対して失敗は13個です。
2016年に比べれば盗塁技術の向上が見えますが、それでも荒木選手の2年連続40近くの盗塁を決め、失敗は10個前後と比べるとまだ差がります。
盗塁は決まればチームに勢いが出ますが、失敗すると一気にチャンスをつぶしてしまう欠点があるだけに、田中選手のもう一段上の盗塁技術向上に期待しましょう。
一方今年の菊池選手は盗塁10個。
足の状態は2017年より良かったはずですし失敗がわずか2個なのは評価できますが、菊池選手の場合、今年はそもそもの出塁機会・盗塁できるチャンスが少なかったのが影響していると見て差し支えないでしょう。
以上3点については、圧倒的な得点力を誇って3連覇の原動力となった打線の上位を担うタナキクを持ってしても、全盛期のアライバにはまだ及ばないようです。
あらためてアライバの凄さが分かります。
それでも出塁率、打点についてはタナキクもある程度今年も成績を残しました。
出塁率についてですが、田中選手は昨年に続いて粘り強く四死球を拾って、リードオフマンとしての仕事をしっかりと我慢強くしてくれていたと思います。
また菊池選手も今年は自己最多の54四死球を記録。
積極的に打っていくスタイルが持ち味ですが今年は打率が残せなかったこともあり、多少自身のスタイルを犠牲にしてでも塁に出ることを優先したのかもしれません。
しかし来年こそは、特に打率の部分でアライバコンビの全盛期に迫るような活躍が見たい!
では今度は去年の段階でタナキクの方が優れているとしていた点を見ていきましょう!
「タナキク」が「アライバ」より優れているところは?
タナキクがアライバより優れている項目は、ホームラン数(長打力)、得点数、そして併殺の少なさ、さらには打点の多さです。
一つ一つ見ていきましょう。
まずホームランについては2016年はタナキク二人ともが13本塁打を記録、今年も2年ぶりに二人そろって2桁本塁打を記録。
アライバはナゴヤドームを本拠地としていた不利はありますが二人合わせてもシーズンで10本記録していないだけに違いは明白と言って良いと思います。
過去2年の結論と変わらず、タナキクにはアライバにはない一発で点を取る力があることがわかります。
長打によるプレッシャーがあるかないかで投手にかけられるプレッシャーも変わってくるかと思いますので、この点では疑いなくタナキクの方が勝っていると言えそうです。
続いて得点数です。
こちらも打点と同様、後続の打者しだいの部分もあるのでタナキクの力だけで言えるわけでもないのですが、後ろには強豪チームのクリーンアップが控えているわけですからそれなりに参考にはなるでしょう。
2016年のタナキクが記録した194得点、2017年の192得点は全盛期のアライバの175点前後より20点近く上回っていました。
今年は177得点と数字は落としましたがそれでも全盛期のアライバ並みの数字ですからカープ打線の恐ろしさがわかりますね。
この得点数の差も先ほど述べた長打力の差も大きく寄与していると思いますが、1, 2番の役割を考えると得点数で上回っているのも大きなポイントと言えそうですね。
また併殺数の少なさも相変わらずです。
2016年のタナキクは二人合計でわずかに4つ(!)、さすがに出来すぎだったか、2017年は14、そして今年は11の併殺打を記録しました。
それでも全盛期のアライバでも二人でシーズン20以上の併殺を記録していることを考えれば、十分少ないと言えるでしょう。
クリーンアップにつながっていく打順の巡りでの併殺打はチームの得点確率を大きく下げるだけに、その少なさはとても大きなメリットです。
菊池選手の送りバントが多いというのも多少寄与しているとは思いますが、田中選手を塁に置いて菊池選手が打つ場面も多くみられました。
送りバントがシーズン10個程度多くてもアライバよりは明らかに併殺数は少ないと結論付けて良いでしょう。
菊池選手のつないでいく力はあの井端選手に匹敵するレベルまできているのかもしれませんね(打ち上げて併殺にならないケースが多い可能性もありますがそこまで検証できていません…)。
打点については今年カープの下位打線が好調だったこともあり、コンビで過去最多の120打点を記録。
得点圏打率が昨年に比べて劇的にあがったわけではないので、単純にチャンスが回ってくる機会が多かったということでしょう。
この辺りはチームメートの助けも非常に大きかったと思いますが、主に1, 2番コンビとして試合に出ていたのを考えると信じられないような打点の多さですね。
OPSについては今年は打率が落ちたこともあり、過去2年とは反対にアライバの全盛期を下回りました。
それでも高いレベルであるのは間違いなく、状態が上がり切らないなりにきっちり仕事はしてくれていたと言えるでしょう。
攻撃編結論
これまで打率、三振、盗塁についてはアライバが優れ、一方、長打力 (ホームラン数)、得点数、併殺数、打点でタナキクが優れている、出塁率は今年タナキクが成績を下げたことでアライバに少し水をあけられたかと思います。
攻撃編の結論としては2016年の「一長一短、現時点ではひいき目に見て五分五分」から2017年の「ややタナキク優勢」、そして2018年もそのままで「ややタナキク優勢」としておきたいと思います。
今年成績を下げたので微妙なところですが3連覇の偉業を果たしたほかの選手たちの力も借りてタナキクコンビが1, 2番の役割としては総合して上回っているとさせてもらいましょう。
もう一度付け足しますが比較対象が攻撃面で全盛期の頃のアライバコンビですから本当にすごいことです(アライバコンビも比較対象としている成績を何年も安定して出し続けられたわけではありません)。
タナキクコンビの課題は変わらず、三振を減らすためにバットに当てる技術、そして塁に出た後に投手の脅威となる盗塁、特にその成功率です。
相変わらずアライバと比べることでタナキクの現在地、そして更なる強力なコンビへと昇華するための課題を確認できるのが素晴らしいですね。
30歳となりタナキクコンビも今が身体的にもピークでしょう。
来年もコンビは継続するでしょうから、是非自身最高の数字を残すシーズンにしてもらいたいですね!
守備編・攻撃編総括
守備編ではまだアライバが優れており、攻撃編ではタナキクが優れていると結論を出したいと思います。
タナキクコンビもコンビ歴の長さではアライバコンビに劣りますが、3連覇を達成したことでプロ野球ファンへの認知度ではアライバに追いついてきたように思います。
アライバコンビは10年弱にわたってドラゴンズの2000年代の黄金期を支えたことでその地位を築き上げた名コンビ。
対するタナキクはまだ本格結成4年目を終えたところ、チームは3連覇を達成して一つアライバコンビの偉業を追い抜きましたが、連続でAクラスに残り続けて黄金期を築くにはまだほんの少しだけ時間が足りません、来年以降も大事になりますね。
3連覇の偉業達成でファンの印象面での差も埋めつつあるとは思いますが、歴史に残る名コンビを超えたと言い切るには、あと少しだけ実績が足りないかなとも思います。
タナキクはまさに身体的ピークを迎えているところです。
この史上最強になる可能性のある素晴らしいコンビが来年以降FAで解消ということがないよう、心の底から願っています。
タナキクコンビがコンビ歴でもアライバを超え、名実ともに史上最強の二遊間コンビとして君臨する、そんな日を夢見て、これからも一戦一戦、必死に応援しようと思います。
日本一目指して、チーム一丸で一戦一戦、頑張ろう、カープ!
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