思ってたんです、必ずしも失策数=チームの守備力ではないのではないかと。今シーズン開幕直後は守備の乱れから失点を重ねて最悪の流れが続いてしまったことでカープの守備力は低下している…そんな印象を個人的にも持っていたんですがセイバーの指標(DER, UZR)でみるとどうなのか。今日はそんな記事を書きたいと思います。
DER (Defensive Efficiency Ratio)とは
簡単に言うとグラウンドに飛んだ打球のうちどれだけアウトにできたかの割合です。
この数字が高いほどチームとして守備力が高い、低いほど守備力が低いと言える数字です。
以下、細かい話が不要な方は次項まで読み飛ばしてください。
具体的には以下のような考え方で産出されます。
(打者数-安打-四球-死球-三振-失策)/(打者数-本塁打-四球-死球-三振)
正確に言えばファールフライを取ったのは分母にも分子にもカウントされるので(落とした場合は打ち直しになるのでどちらにもカウントされない)、フェアゾーンに飛んだ打球だけを見ているわけではないですが、ホームランや三振、四死球といったものは分母からも分子からも除かれており、チームの守備力を総合的に示す指標として参考になります。
極端なシフトを敷いた影響でヒット性の打球をアウトにしたり、またはその逆になることもあってその影響を除外することはできないので単純に守備力だけというわけでもないのですが、長いシーズン通して見れば十分、チームの守備力を測る有意義な指標だと思います。
例年平均すると68 - 69%あたりの70%弱の数字に落ち着くことが多いようです。
裏を返せば三振さえせずにバットに当てれば30%以上の確率で出塁できることになるとも言えます。
投手に取って奪三振が評価される理由ですね。
このDERがリーグ平均より1%上がることでシーズンを通して見れば失点を30点近く減らしたと概算できるようです。
たかが1%、されど1%ですね…恐ろしい。
今年のカープのDERは…
以下のサイトを参照して5/19終了時点までの数字を見るとカープのDERは69%弱程度。
これは7割を余裕で超えて昨年に続いてダントツトップのドラゴンズに次いで、ベイスターズと並んでほぼ同水準(正確には3位ですがほぼ2位タイ)。
http://www.baseball-lab.jp/league/
ここまで12球団ワーストの37失策を記録しているのとはまた違った印象ではないでしょうか。
上記のDERというのは当然エラーによって出塁を許してしまったのも加味された数字なので、エラーがなければもっと数字は伸ばせたということにはなります。
そもそもカープは打球が不規則な変化をしやすく守るのが難しい天然芝のマツダスタジアムを本拠地とすることで例年他チームよりどうしてもエラー数は多くなる傾向にあります。
実は昨年もエラー数は83個と12球団でワースト3位(ワーストはスワローズとタイガースの88個)。
ここまで43試合でエラー37個はさすがに多すぎますが、ペースとしては一時期のひどすぎたときから比べてだいぶ落ち着いてきています。
その影響もあってかDERも一時期の.660程度から少しずつ回復して今のリーグ上位の水準まで上がってきているわけです。
もちろんエラーをすることでそのイニングはアウトを4つ取らなくてはいけなくなり、失点する確率が跳ね上がるという事実は覆せませんしDERはその効果は考えられていない指標です。
これをもってカープの守備力がリーグ上位と断言できるかどうかの疑問は残りますが、それでも失策数だけを見てリーグワーストの守備力と言うのは違うと思います。
エラーのペースがもう少し落ち着いてくれば、その時こそカープの守備力はリーグ上位だと自信を持って言えそうですね!
カープの中でリーグ平均以上の守備をしている選手は…
ここからは個別に各選手の守備での貢献度をUZRを使って見ていこうと思います。
UZRについての細かい説明は以下の過去記事を読んでいただければと思いますが、簡単に言うと守備範囲やエラー数を考慮に入れて各選手が平均的な同ポジションの選手と比べて何点守備で失点を減らしたか(あるいは失点を増やしてしまったか)という数字となります。
UZRの数字は5/19日終了時点のものを以下のサイトから引用しています。
https://1point02.jp/op/gnav/leaders/pl/pfs_advanced.aspx?sn=2019&lg=0&tm=0&ps=2&sl=1&sr=0&pn=-1
捕手 会澤選手 -0.3
一塁 バティスタ選手 -0.8
二塁 菊池選手 3.4
三塁 安部選手 -1.0
遊撃 田中選手 -2.3
右翼 鈴木誠也選手 1.3
中堅 野間選手 -2.2
左翼 西川選手 4.3 (レフトの12球団トップ)
この数字を見ると貢献度が大きいのはセカンドの菊池選手とレフトの西川選手。
鈴木誠也選手も足の状態が上がって守備範囲が戻り、昨年の-5.3と比べて大きく数字を伸ばしてくれています(2017年は2.3)。
菊池選手は例年通りの素晴らしい数字ですが、外野手挑戦1年目の西川選手がこれだけ守備で貢献してくれているのは特筆もの。
レフト自体が筒香選手やバレンティン選手のように打撃重視の野手が起用されやすいポジションであることもあり、同ポジション平均との比較では数字が出やすいという点は考慮に入れる必要があります。
当然他のポジションの選手と数字自体を比べることにはあまり意味はないのですが、それでもレフトの中で12球団トップの数字を残しているのは素晴らしい。
実際にかなり長打を防ぐ好守を見せてくれている印象があるので納得の数字です。
サードの安部選手はエラー分が-2.7とかなりのマイナス。
これに代表されるように12球団ワーストの失策数なので当たり前ですがカープの選手は全体的にエラー分のマイナスが多い(田中選手-0.8、菊池選手-1.2等)。
ここが改善されればここまで素晴らしい活躍を見せてくれている投手陣をさらに助けて、チーム状態はますます上がってきそうです。
田中選手の現状のマイナスの数字についてですが、今年が圧倒的に悪いわけではありません。
ゴールデングラブ賞を獲得した昨年は2.2でしたが2017年は-0.9、2016年が4.1。
UZR自体が数字にして客観視しようとした指標ではありますが、その過程では主観的な評価がどうしても入ってきます。
またどんな打球が飛んできたかの運もあります(アウトにして当たり前と判断される当たりをアウトにしてもほとんど評価されない)。
ちなみに去年センターでゴールデングラブを取った丸選手のUZRは-4.3。
UZRという指標がファンの守備での貢献への印象とかけ離れてしまう場合もあるのは付記しておきます。
大体シーズンを通せばショートという守備のレベルの高いポジションで平均以上の数字を残してくれるはずの選手ですから、現在のマイナスの数字は打撃の不調ほど気にする必要はないと思います。
そんなこんなで色々と書いてきましたが何を言いたいかというと12球団ワーストの失策数はいただけませんが、マツダスタジアムを本拠地とする以上、リーグ平均以上の失策数となってしまうのはある程度仕方ない部分があるので割り切るべきだということ。
そしてそのエラーを含めて考えてもカープの守備力自体は、全体としてみればリーグ平均を上回る水準にはあるということ。
というわけでカープファンの皆さん、今年のカープの守備を悲観する必要はないです!
でも、カープ野手陣の皆さん、なるべくエラーは減らしてください!
明日からはいよいよ首位を伺う一週間となりそうで楽しみですね。
週末の東京ドームにチームの良い状態を維持して乗り込みますよ!
球団記録をさらに更新するリーグ4連覇へ、チーム一丸で今年も頑張ろう、カープ!
このブログの応援もよろしくお願いします♩⇩