ジャイアンツを自由契約となっていた上原投手が来シーズンもジャイアンツでプレーすることで合意したとの報道が本日ありました。偉大の投手の現役続行は嬉しいニュースである反面、丸選手の人的補償を考えると納得しづらい側面も…。今日はこの話題について書きたいと思います。
人的補償の規約はどうなっているのか
人的補償の対象となる選手についてはフリーエージェント規約には以下の簡単な記載しかありません。
"旧球団が,選手による補償を求める場合は,獲得球団が保有する支配下選手のうち,外国人選手及び獲得球団が任意に定めた28名を除いた選手名簿から旧球団が当該FA宣言選手1名につき各1名を選び,獲得することができる。"
では問題はカープが補償で選手を選ぶ際に上原投手がジャイアンツの"支配下選手"に当たるのかという問題ですが、残念ながらおそらく答えはNOだと思います。
今年のNPBでの新規支配下選手登録の公示履歴を振り返ると、2018年の登録選手が一斉に公示されたのが1/31。
そこから追加で一番早かったのがメジャーからスワローズに復帰した青木選手で公示日は2/5。
同じくジャイアンツに今シーズン復帰した上原投手の公示日は3/9。
カープがジャイアンツに選手選択を通告しなくてはいけないのが丸選手の移籍が公示されてから40日と定められており、1月中旬までですのでそれまでに今回合意したとされる上原投手がジャイアンツの支配下登録選手として再登録される可能性は限りなく低いといえるでしょう。
上原投手が人的補償の対象になるのであればメジャーから復帰の岩隈投手や、自由契約で獲得した中島選手も対象にならないと矛盾しますしね。
やはりカープあるいはライオンズが人的補償で上原投手を選べる余地はないと結論付けるのが自然です。
獲得するしないは別問題も明らかな抜け道として周知されてしまったのは問題…
今回の上原投手は44歳になる年齢での手術のため自由契約となったという特異な例とはなりますが、それでもジャイアンツが一度自由契約としていなければ28人のプロテクトリストの1枠を使っていた可能性が十分ある投手です。
プロテクトしていれば当然、現時点でカープ、そしてライオンズに提出されているプロテクトリストから1人選手がはじき出されていたはずです。
一方で上原投手を載せないならそれはそれでカープ、ライオンズに獲得する選択肢ができるわけで、今回の巨人の対応は人的補償の抜け道として物議をかもして当然と言えるでしょう。
意図的に抜け道として使う悪意があったかどうかは置いておいて、今回の対応により人的補償制度の抜け道が発見されたという事実は変わりません。
自由契約だったのだから他球団も交渉できたはずと指摘も間違いないですが、交渉は出来ても獲得に自由契約から合意するかどうかは、人的補償での指名の場合には必要ない選手本人の意思が絡むという点で明確に状況が違います。
昨年の日本ハムからFA移籍した大野選手の補償で岩瀬投手の引退騒動があったことは記憶に新しいですが(東京スポーツの報道の後、サンケイスポーツもコラム欄で触れていましたので計2紙の報道といえると思います。真偽のほどはプロテクトリストが公表されていない以上分かりませんが、個人的には信憑性はそれなりにある、少なくとも対策を講じるべき抜け道だと思います)、どうもFA移籍での人的補償は適用される例が毎年数件程度と限られているだけに制度の設計に不備がまだ残っていると言わざるを得ません。
力が衰えているもののチームの功労者でファンからも親しみのあるベテラン選手をプロテクトするかどうかは毎度、FAで選手を獲得した球団は頭を悩ませるところだと思います。
だからこそこういう抜け道が出てくるのだと思いますが、抜け道が見つかったのであれば塞がないと制度としての納得感が失われてしまいます。
野球規約では人的補償に指名された選手が拒否した場合は資格停止となる旨がペナルティとして定められていますがベテラン選手がそれならば引退することを選択するというケースはこれからも十分可能性があるでしょう。
ここへの対策は非常に難しい…ルールに則って指名しても嫌だから引退すると言われればその選手の資格停止という現行のペナルティは何の意味も持ちません。
補償金銭の上積みくらいしか現実的な変更は難しいかもしれませんね。
その一方で今回の上原投手のように、一度自由契約として同一球団と再契約という事例についてはもう少しやりようがある気もしますが、それでも少し難しいか…。
公示されていなくても同一球団で続けてプレーする場合には支配下登録選手として取り扱う旨の改訂をしても、それならば再契約合意の発表を人的補償のプロセスが終わった後に先送りすればいいだけですしね…。
こういった面倒なことが発生する人的補償をやめて選手のランクに応じたドラフト上位(1位、あるいは2位)の指名権の譲渡とかにしても面白いと思いますが、FAで獲得する機会の多い球団は納得しないでしょうね。
贅沢税や総年棒制限のないNPBではどうしても資金力が戦力に直結しやすい構造が残っているだけに、最低限の戦力均衡策として定められた人的補償制度もここ数年で複数の抜け道が見つかって納得感が薄れつつあります。
実績ある上原投手の現役続行は他球団のファンからしても嬉しい部分があるニュースなのですが、それがこういった議論と絡んで複雑な気分にさせられる事態には正直がっかりしています。
とにかく抜け道として見つかった以上、NPBにはしっかりと対策を議論・公表して納得感を高める取組みをしていただきたいところです。
球界全体で納得感ある仕組みを整備していくことが野球人気をつなぎとめるのに役立つはずです。
カープとしてはこれはこれととりあえず割り切って、現時点で獲得可能な選手の健闘を進めてくれることでしょう。
誰を獲得する決断を下すのか、楽しみに待ちましょう!
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