野球ファン、そして特にカープファン、ドラゴンズファンの皆さん、気になっていませんか、カープの誇るタナキクの二遊間はひょっとしたらあのアライバを超えているのではないかと。
今日は連覇を達成した2017年の成績も踏まえて、タナキクとアライバを比較した過去記事を更新したいと思います。
攻撃編はこちら!
そもそも「タナキク」?「アライバ」?という方に
ご存知の方も多いかとは思いますが念のため、タナキクとは現在カープが誇る二遊間、ショート田中広輔選手とセカンド菊池涼介選手のコンビ名、2014年に社会人を経ていたためにルーキーだった田中広輔選手がショートのレギュラーの座をほぼ確実のものとしたことで、すでに圧倒的な守備で不動のセカンドレギュラーだった菊池選手とのコンビがスタート。
2015年からシーズンを通してコンビを組み、2016年、カープ25年ぶり優勝の際には守っては不動の二遊間コンビ、打っては1, 2番コンビとして一躍注目を集めました。
対するアライバとは10年ほど前に全盛期を誇ったセカンド荒木雅博選手とショート井端弘和選手の中日ドラゴンズの二遊間コンビでこちらも同じく攻撃では1, 2番を打っていました。
強固な守備、堅実な打撃、機動力を併せ持ち、二人そろって走攻守揃った名選手、2000年代、ドラゴンズの黄金期を支えた間違いなく歴代屈指の二遊間コンビです。
さて、そもそもタナキクを比べる相手としてアライバが適切なのか、アライバより勝っていれば史上最強と言えるのか。
1980年代以前を持ち出されると正直、ごめんなさい、分かりません。
しかし、そんな疑問を解消できるかもしれない、アライバが史上最強とされる理由を記載している記事で個人的にはなるほど、と思えるものを見つけましたので興味のある方はご覧ください。
"驚異の守備力で中日のAクラスに貢献。史上最高の二遊間は「アライバ」"
http://news.livedoor.com/article/detail/11164573/
紹介した記事では主に守備面を特集しています。
結論として"守備の精度の高さ、守備範囲の広さ、そして8年以上の長きにわたって鉄壁の二遊間を築いた息の長さを考慮すると「アライバ」こそが、NPB史上最高の二遊間である"としています。
「タナキク」と「アライバ」守備範囲は?
さて、アライバの凄さは個人的にはリアルタイムで見られたので十分わかっていますが(そう、あの頃のカープは15年連続Bクラスの低迷期真っ只中でした)、リアルタイムであまり印象のない方はご納得いただけたでしょうか。
ここではアライバこそが史上最強だ、という前提の上でここから先、タナキクと比較してみたいと思います。
まずは守備範囲、ということでタナキクのデータ、特に最新の昨年のデータを上記記事と同じ方法で追加してみました。
二遊間が1シーズンにアウトにした数を多い順
1.2005年中日 1590(刺殺614補殺976)
二塁・荒木雅博(刺殺410補殺496)遊撃・井端弘和(刺殺204補殺480)
2.2016年広島 1523(刺殺536補殺960)
二塁・菊池涼介(刺殺307補殺525)遊撃・田中広輔(刺殺224補殺467)
3.2009年中日 1503(刺殺576補殺927)
二塁・荒木雅博(刺殺358補殺450)遊撃・井端弘和(刺殺218補殺477)
4.2015年広島 1496(刺殺536補殺960)
二塁・菊池涼介(刺殺324補殺484)遊撃・田中広輔(刺殺212補殺476)
トップ10圏外.2017年広島 1362(刺殺488補殺874)
二塁・菊池涼介(刺殺281補殺407)遊撃・田中広輔(刺殺207補殺467)
刺殺はフライ、ライナーやタッチアウト、フォースアウトなど走者を直接アウトにした数で、補殺は他の野手に送球してアウトにした数とのことです。
二遊間の年間刺殺数・補殺数を足した数は何と歴代4位までをタナキクとアライバで占めていますが、歴代1位は依然としてアライバです。
昨年のシーズンを通して割と良い状態を維持できていたタナキクコンビでも届かないとは、アライバ恐るべし…。
2017年シーズンのタナキクコンビは、菊池選手がWBCの影響もあり足に不安を抱えていた時期もあり、その影響がもろに成績からも読み取れます。
欠場した試合の数こそ少なかったですが、例年に比べて補殺、主にゴロを捌いた数ですがこれが例年の8割程度にとどまっています。
今シーズンのタナキクコンビについてのもう少し細かい話はセイバーマトリクスの指標であるUZRを使って、この記事の最後で議論したいと思います!
一つ忘れてはいけないのが各シーズンで試合数が異なるということ。
単純にアウト数で比較していますので、当然試合が多い方が有利となります。
2016年は143試合、2005年は146試合ですのでアライバに有利、ということでこれを単純に補正すると2016年タナキクの数字は約1555にまで伸びます。
アライバの凄さは変わりありませんが、タナキクも十分驚異的な数字を残しているとは言えそうですね。
では「タナキク」と「アライバ」守備では同等?
ただこれをもってタナキクの守備がアライバと同等だと断ずることは出来ません。
その理由が守備率です。
引用元の記事のうち歴代守備率トップ10に3度も入っているアライバコンビ。
3.2004年中日 守備率.9929 アウト数1407 失策数10
二塁・荒木雅博 遊撃・井端弘和
5.2003年中日 守備率.99254 アウト数1065 失策数8
二塁・荒木雅博 遊撃・井端弘和
6.2005年中日 守備率.99251 アウト数1590 失策数12
二塁・荒木雅博 遊撃・井端弘和
それでは2015年、2016年のタナキクはというと…
2015年広島 守備率.9791 アウト数1496 失策数32
二塁・菊池涼介 遊撃・田中広輔
2016年広島 守備率.9858 アウト数1523 失策数22
二塁・菊池涼介 遊撃・田中広輔
2017年広島 守備率.9848 アウト数1362 失策数21
二塁・菊池涼介 遊撃・田中広輔
今シーズン、田中選手は4月の大量エラーからよく持ち直したとは言えるでしょうが、それほど難しくない打球での捕球ミスや悪送球が目立ちました。
まだゴールデングラブ賞を取ったことがないことからも、その守備にはまだ課題があると言えるでしょう。
.992を超える驚異的な数字を叩き出しているアライバコンビに対してタナキクコンビは一度も.990の大台に達しておらず、違いは一目瞭然です。
最強の二遊間の座を射止めるには間違いなく守備での安定感が残された課題であることが分かりますね。
特に田中選手は2015年が22個、2016年が18個、そして今シーズンも16個とエラーが多くなっています。
田中選手のエラーはその積極性と守備範囲の広さが有ればこそと言われますが、それでも全盛期の井端選手もほぼ同じ守備範囲を有していて、それに加えて凄まじく確実性の高い守備を実践していました。
菊池選手は正面の打球への処理に格段の進歩がみられ(昔は正面の打球を良くはじいてしまい、逆ドーナッツ型の守備などと揶揄されていました)、昨年はわずかにエラー4つ。
目を見張る上達で隙が無くなりましたが、今シーズンは足の状態の影響もあり、らしくないエラーが見られましたね。
エラーの数は1つ増えただけですが守備機会が足の状態の影響でかなり減ってますので、やはり足の状態の悪さがその守備の安定性にも影響をもたらしたと言えるでしょう。
守備の確実性の面での結論としては、昨年と変わらず、まだ現時点ではアライバに及ばないと言えると思います。
「タナキク」の守備をUZRを使って調べてみた
アライバコンビについてはデータが手に入りませんでしたので比較はできませんが、タナキクコンビについてセイバーマトリクスの守備指標として現在最も用いられているUZRの推移から、今後の伸びしろについて考察してみたいと思います。
UZRとはUltimate Zone Ratingの略で「リーグにおける同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、守備でどれだけの失点を防いだか」を表す指標です。
人間の目で見てどのゾーンに飛んだ打球か、その打球の強さ、速さはどの程度だったか、といったデータを仕分けしてその打球であればNPB平均でどれくらいの確率でアウトにできるかと比較してそれぞれの打球処理にプラス、マイナスの評価が与えられます。
簡単に言えばプラスの数字が大きいほど平均と比べて守備で失点を減らすことに貢献した選手、数字がマイナスであれば平均以下の守備で失点を増やしてしまった選手ということになります。
より詳細はWikiPedia等に説明がありますのでそちらを参照いただければと思います。
さて、DELTA社が公開している数字に依ればタナキクコンビのUZR推移は以下の通りです。
2015年 田中 2.9 菊池 9.7
2016年 田中 4.1 菊池 17.3
2017年 田中 -0.9 菊池 3.2
この数字でも2015年に比べて2016年はともに大きく数字を伸ばしていること、その一方で2017年は両者ともに数字を落としていることが分かります。
特に田中選手に至っては今シーズンはマイナスの数字を記録。
ショートのレギュラー選手としては平均をやや下回る成績というのは少し寂しいですね、ただそれもごくわずかで主観が入ってくる指標ですので平均だととらえておけば良いと思いますが。
ちなみに坂本選手は今シーズン10.6、京田選手は6.8を記録。
ゴールデングラブ賞常連の坂本選手は2016年は15.1、2015年は32.3と田中選手より大幅に優れた成績を残しており、タナキクコンビが守備面でアライバコンビと比較できるレベルにまで達するには田中選手の守備が課題と言えそうですね。
とはいえ、2年連続フルイニング出場をしてくれており、センターラインを固めてチームに大きな安定感をもたらしてくれているかけがえのない選手です。
あくまで"史上最強"になるためには…という非常に高いハードルを前提とした話であることは改めて強調しておきたいと思います。
一方菊池選手。
2015年は実は山田選手が17.6を記録しており、菊池選手を上回っています。
それでも2016年の17.3はセカンド選手の中ではダントツ、今年も3.2と数字こそ落としていますが12球団のセカンドでトップの成績です。
数字の絶対値はあくまで平均との相対評価になりますので違うシーズンで比べてもそれほど大きな意味はないと思います。
他球団に守備の上手い選手がごろごろいれば数字は小さくなりますし、逆に比較対象の選手のレベルが低ければ数字は大きく出ます。
毎年レギュラー選手には入れ替わりがあり、コンディションも異なるでしょうから基本的にはあくまでその年の他の選手との比較で使うのが正しい使い方でしょう。
それでもここから2017年は田中選手、菊池選手ともに守備ではもう少し成績を伸ばす余地のあるシーズンだったとは言えるのではないかと思います。
守備編結論
これまで見てきたように、
・守備範囲の面では良いところまできているが、確実性の面ではアライバに分がある。
・2017年シーズンはタナキク共に守備ではもう少し成績を伸ばす余地のあるシーズンだった。
以上2点から昨年同様、タナキクはかなりいい線をいっていますが、守備の面では史上最強のアライバには "まだ"及ばないという結論は据え置きです。
また、カープファンだからタナキクを擁護するわけではないのですが、ドラゴンズとカープの本拠地の違いにも注目する必要はあると思います。
そう、カープのマツダスタジアムは天然芝、ドラゴンズのナゴヤドームは人工芝ですよね。
天然芝の球場はイレギュラーが多くエラーも増える傾向があり、打球の勢いも比較的弱まりアウトにするのが難しく、内野安打も増える傾向にあります。
とはいえ、グラウンドは送球面にはあまり影響がないはずですのでまずは田中選手の守備の安定性が増すとまた一歩近づけるとは思うのですが…期待しましょう!
そして連覇を達成した2シーズンでほぼ固定の二遊間、1, 2番コンビだったことで少なくとも実績面ではアライバコンビにまた一歩近づいたとは言えるでしょう。
結成して既にフルで3シーズン戦っているわけですしね。
ただアライバは7年、8年と固定してドラゴンズ黄金期を支えた実績があります。
想像したくはないですが数年後のFAの権利取得後の動きにも左右されそうですね…。
議論は尽きませんが、タナキクはまだまだ伸びシロのあるコンビですので、近い将来、記録面でもアライバを超えてくれると信じて応援したいと思います!
タナキクはまだまだ全盛期の始まりだと信じています。
いつの日かタナキクが名実ともに史上最強の二遊間コンビとして君臨する、そんな日を夢見て、これからも一戦一戦、必死に応援しようと思います。
さて、攻撃編も2017年の成績を基に更新した記事を書きたいと思います。
乞うご期待、です。
攻撃編はこちら!
日本一へ向けて、チーム一丸で一戦一戦、頑張ろう、カープ!
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